新技術を生み出すインテリジェンスの拡大を目指して
「社員が活き活きしていない!」ふと会社がそのような雰囲気になったことが全てのきっかけでした。
私たちは会社の中でなんでも自由にできる小集団活動というものを始めました。その中である社員たちが「速読」というグループを作り面白そうと感じた当時新米部長の私が仲間に加わりました。
速読について興味を持っていた物の当時はインターネットも無い時代。まずは情報を様々なところから集めて速読の調査を始めました。いろいろと見ていくと、大半の速読ノウハウは、斜め読み、拾い読みというものがほとんどでしたが、その中で一つだけ「全てに目を通す」というものがありました。
この「全てに目を通す」という速読に興味をもったグループの若手2人が青山の当時の速読教室に様子見を兼ねて通い始めました。二人の感激ぶりに誘われて私も入会すると「これだ!」と思うものがあり、佐々木先生に研究所にお越しいただいて速読実演をしていただいたのがNBSとのお付き合いの始まりです。
新しいアイデアを生み出すために速読を!
キヤノンの新しい製品には必ず新しい技術が組み込まれています。新しい技術が無いと新製品は出せないのです。新製品を出すために新技術の研究・開発が行われています。そのためにアイデア出しが行われます。
新しいアイデアは一人の頭からはなかなか生まれないのですが、いろいろな経験をしたメンバーが集まりアイデア出しをすれば、自身の頭の中にあるアイデアが周りの人から出てきたアイデアに触発されて新しいコト・モノが出てきます。新しいモノ・コトを出すためにはいろいろなメンバーの知識・知恵を融合させることが必要で、融合させる知識・知恵が広範囲にわたっていればそれだけ斬新なアイデアが出てくる可能性が高くなってきます。
個人の頭の中身はドンドンと多く大きくなって行かないと直ぐに陳腐なアイデアしか出てこなくなってしまいます。個人は常にチャージアップしていなければなりません。そのためにはできる限りの知識・知恵に触れなければなりません。情報は年々20%近くの増加率です。通常の人ではこの情報の増加には追いつけません。「速読」が必要なのです。
その速読も「拾い読み・斜め読み」ですと、個人のインテリジェンスの森の中の1本の木を茂らせるだけですが、NBSの「全てに眼を通す速読」ですと個人のインテリジェンスの木を茂らせるばかりか、その森の木を多くし、そればかりか森をも増やすことが出来ます。
この様な豊かな木々、豊かな多くの森を持ったメンバーが集まってアイデア出しをすると素晴らしいアイデアが出てきて素晴らしい製品を生み出すことが出来るようになります。優れた個人智が集まれば豊かな集合智を生みだすことができます。このような集合智はキヤノンばかりでなく日本の国にとっても必要なことだと思います。
博士論文を3ヶ月で書き上げる
速読を教えていただいてもう一つ大変に助かったのは、博士論文を書いたときです。たまたま学会の研究会の委員長をされていた東工大のY先生が大阪からの新幹線の中で「松島さん、論文を書く気はありますか?」と言われ「見ていただける先生がいらっしゃったら・・・」との返事に「私が見ましょう。ただし、私は後2年で定年です。博士論文の必要条件は外国語の論文1つ以上、他に論文3つ以上、英語での口頭発表1回以上が必要です。」と言われました。
いろいろとある中で、先生が委員長をされている研究会の分野での特許は沢山あったのですが、この分野での論文は1つだけでした。いろいろと考えた結果、20年近く昔にやった分野では学術論文を2つ書けば最低線をクリアできます。家にストックしていた資料を調べましたら生のデータがかなり出てきました。
先生は「『技術の新しい・古いではなく、いかに考えるか』です。」と仰っていました。この技術は、今でも製品化されて車に積まれているのでそれに合うような考えで論文を2通ものにして必要条件をクリアすることが出来ました。
その前にこの分野で技術がどこまで発表されているのかを調べる必要がありました。先ずは、科学技術論文速報、Chemical Abstractsを50年程さかのぼって調べ、関係ありそうな論文を全て取り寄せました。集まったものを積むと高さは私の背程になりました。それら全てに眼を通し、博士論文に必要なモノだけを選り出しましたら高さは半分程に減りました。
選り出した論文を読み、博士論文の各章にしたがって分類し、その後各章ごとの論文を読み直したところで気がついたら本論文を書き始めていました。論文一つ一つをまとめることもなく書き始めるまでに都合3度しか眼を通していないのにもかかわらず、本論文を書き進めることが出来、Y先生に見ていただけるような状態にまでまとめるのに正味約3ヶ月ほどでした。
このようなことが可能だったのは「佐々木先生の超速読」のお陰だと感謝しております。先生の超速読は記憶に鮮明に残り、思い出すのも容易で素晴らしいものです。先生の超速読がなかったら博士論文をY先生の定年までにまとめることが出来なかっただろうと思います。私のような中途半端な履修者でも「超速読」は素晴らしい能力を発揮することが出来るようです。
脈絡膜炎が気にならなくなる
余談ですが、先日、先生の新著を読んでいる間に気がついたことがあります。私の右眼は脈絡膜炎で、中心部近くの網膜に歪みが残り、像がひどく歪んでしまいます。右眼は効き眼で、しかも左目よりも2割程大きく見えますので普段から難儀しています。
1昨年の夏に、2日コースにお伺いした折も速読すると左眼だけで見ているのが判りました。両眼視が出来ていないのです。ところが、先生の「超速読」の御本を読んでいるときには像の歪みも大きさも気にならず、私なりの速読が出来ていました。不思議です。もっと訓練して右眼の障害を乗り越えてみたいと考えています。